AI × CAD / BIM Research Report

店舗CADは、どこまで
AIで内製化できるか

ChatGPTとCAD/BIMを使い、出店デベロッパーへの店舗デザイン提案を高速化するための、現状評価と導入ロードマップ

調査基準日:2026年8月31日 対象:多店舗小売・スーパーマーケットを中心とした店舗開発 用途:経営判断/導入設計/顧客説明
Executive verdict
「最初の3案」から試験内製する

要件整理、複数案、平面イメージ、初期3D、提案資料を社内で試す。施工・申請は専門家へ残す。

Developer proposal
3案件

同じ元図で従来外注と並走し、速度・修正・費用・品質を比較する。

Construction / permit
専門家継続

法適合、設備、構造、冷凍冷蔵、施工・申請図書の責任は専門家が担う。

※ 効果はヴェルジェの3案件PoCで測定します。事例数値は各公開元の説明であり、ベンダー保証値ではありません。

01 / Executive Summary

経営判断としての結論

CADそのものを丸ごとAIに置き換えるのではなく、出店判断と初期プレゼンの速度を社内に取り戻すのが、現在もっとも成功確率の高い内製化です。

内製

要件整理・面積表・ゾーニング・複数案・初期3D・パース・提案資料は、標準データがあれば高い比率で社内化できます。

協業

実施設計・構造・設備・冷凍冷蔵・消防・確認申請は、AIを補助に使いつつ設計者・専門業者の確認を残します。

資産化

競争力になるのはAI契約ではなく、自社の店舗標準・什器ライブラリ・配置ルール・過去承認案です。

推奨方針:「フロントエンド内製、バックエンド専門家連携」。候補物件を受け取った当日〜翌営業日に3案と3Dイメージを出し、採用案だけを外部設計へ渡す体制に切り替えます。

AIは「CADソフト」ではなく、設計工程の司令塔

ChatGPTは、図面を読み、条件を構造化し、面積・隣接関係を整理し、CAD/BIMへの指示やスクリプトを作り、結果をチェックし、提案資料までまとめる役割に強みがあります。正確な線・壁・部材・ファイル互換性は、Rayon、SketchUp、AutoCAD、Revit、Snaptrude、TestFitなどの作図・設計ツールが担います。

誤解しないポイント:「きれいなパースが出た」ことと「建てられる図面ができた」ことは別です。AI画像は営業イメージ、CAD/BIMは寸法・属性を持つ設計データ、施工・申請図は法適合と責任を伴う成果物です。
02 / Why now

なぜ、いま内製化が現実的になったのか

1. CAD形式を保った受け渡しがしやすくなった

AutoCADはDWGを標準形式として扱い、RayonもDWG/DXFの読み込みと書き出しに対応します。初期案をブラウザで作り、必要な案件だけ本格CADへ渡す分業がしやすくなりました。17

2. BIMの中をAIが理解し始めた

Revit 2027ではAutodesk AssistantのTech Previewが、自然言語によるモデル分析、ビュー・集計表、パラメータ、部屋管理、基本モデリングを支援します。一方、公式Revit MCP Serverの現行版は安全性重視の読取中心です。1011

3. ブラウザCADが共同作業に向いた

Rayonは正確な平面図、リアルタイム共同編集、4,000超のアセット、DWG/DXF/PDF/PNG出力を提供し、小売・スーパーマーケット向けの利用を明示しています。CAD初心者を含む初期提案チームに適します。7

4. 敷地・プロトタイプ比較が自動化

TestFit 5.21では、小売プロトタイプの複数バリエーションを候補位置に一括配置し、適合案を比較する生成設計が追加されました。駐車場・敷地条件を含む郊外型店舗で特に有効です。9

現在地:一つのAIが店舗設計を全部行う段階ではありません。しかし、LLM+専門CAD/BIM+標準ライブラリを組み合わせれば、従来外注していた「最初の案」を社内で高速に作る条件は揃っています。
03 / Scope of In-House Production

工程別:どこまで内製化できるか

評価軸は、①現行製品で実行可能か、②店舗標準を再利用できるか、③出力を人が検証しやすいか、④法的・技術的責任を伴うか、の4点です。

1
物件資料を読むPDF・写真・DWG・貸方基準
2
条件を構造化面積・制約・未確定事項
3
3案を作るゾーニング・動線・什器
4
2D/3D化CAD・SKP・BIM
5
見せ方を作るパース・比較表・提案書
6
専門レビュー法規・消防・設備・構造
7
実施設計・申請有資格者・専門業者
主に内製専門家責任を残す
工程内製化の実務推定AIができること人が残す判断主な出力
物件資料・デベロッパー基準の読解85–95%
PDF・画像・表から条件、矛盾、欠落、質問事項を抽出原本照合、現地・貸主への確認制約一覧、質問票
面積プログラム・隣接関係80–95%
売場・バックヤード・部門別面積、隣接表、優先順位の作成売上戦略、運営方針、部門責任者合意面積表、バブル図
初期ゾーニング・複数案70–90%
売場重視、動線重視、低コスト等の比較案を高速生成採用基準とトレードオフ判断A/B/C平面案
什器・通路の標準配置65–85%
標準ブロック、寸法ルール、列配置、数量カウント現場運用、商品政策、視認性、補充性什器レイアウト
2D図面の清書・寸法・レイヤー55–80%
CAD下書き、DXF/DWG出力、注記、スタイル統一、スクリプト生成縮尺、寸法連鎖、納まり、ファイル検証PDF、DWG、DXF
初期3D・店内イメージ70–90%
躯体・壁・什器・サインの簡易モデル、視点作成形状精度、材料・什器の正式仕様SKP、BIM、3Dビュー
パース・ムード・プレゼン80–95%
3Dに沿ったレンダリング、比較ボード、コピー、説明資料誇張・架空要素の排除、ブランド承認PNG、PDF、スライド
敷地・駐車場・店舗プロトタイプ比較70–90%
敷地条件に対する複数配置、駐車台数、建物位置の比較交通、条例、事業収支、造成・インフラ判断配置比較、面積・台数表
概算数量・コスト比較50–75%
モデル・ブロック数から概算数量、差分表、見積前提整理単価DB、歩掛、工法、発注条件、正式見積概算表、VE比較
整合チェック・QA45–75%
面積差、未配置、命名、重複、ルール違反候補を検出図面全体の責任あるレビュー指摘リスト
実施設計・詳細納まり25–50%
標準詳細の候補、注記、反復作業、既存モデル検索施工性、構造・設備調整、責任設計実施図の補助
法規・消防・設備・冷凍冷蔵の最終判断10–30%
要件候補、チェックリスト、行政質問案、資料探索法適合、計算、協議、設計者・行政・専門業者判断確認用メモ
申請・署名・対外責任0%
書類準備の補助資格者・申請者・事業者が全面的に担う正式申請図書

内製化率は「AIが単独で完成させる割合」ではなく、「標準化+AI+社内担当者で、外注せずに作成・検証できる工程比率」の推定です。

04 / ChatGPT and CAD

考えるAIと、正確に描くCADを分ける

ChatGPT
Planning / Analysis / Deliverables
  • PDF・図面画像・写真の読解、要件抽出、矛盾チェック
  • 面積表、配置ルール、比較表、QAチェックリスト
  • Python/AutoLISP等のコードやDXF・SVG生成の支援
  • パースの叩き台、HTML・資料・スライドの仕上げ
  • Projects、カスタムGPT、接続ツールで社内標準を再利用
最適役割:案件の司令塔+提案書工場
Rayon
Fast 2D Planning / Collaboration
  • PDF・画像・DWG/DXFを下敷きにした初期平面
  • 壁、売場、什器、寸法、文字、動線の作図
  • ブラウザ上での共同編集とレビュー
  • PDF・DWG/DXFで外注先へ受け渡し
  • CAD未経験者が最初の3案を作る用途
最適役割:最初の3案件を試す平面作図
本格CAD / BIM
Native Files / Detailed Coordination
  • AutoCAD:外注先とDWGを直接編集・返却
  • Jw_cad:外注先がJWWを指定し、Windowsで作業
  • Vectorworks:内装の2D・3D提案を一体化
  • Revit/Archicad:BIMを正式な共通基盤にする場合
  • 採用形式は外注先のネイティブデータに合わせる
最適役割:継続的な直接編集と正式な連携
日本での選び方:「日本だからJw_cad」ではなく、外注先の元データと返却形式で決めます。まずRayon。DWGの直接修正が増えたらAutoCAD、JWW指定ならJw_cad、内装の2D・3Dを同じ環境で担うならVectorworksを検討します。1567
外注先へ先に確認する4項目
  • 受け取る元データはDWG、JWW、VWX、PDFのどれか。
  • 社内案をどの形式で返せば、そのまま編集を続けられるか。
  • 単位、縮尺、レイヤー名、ブロックの決まりがあるか。
  • 外部参照、フォント、印刷設定など一緒に必要なファイルがあるか。
05 / AI CAD & BIM Landscape

目的別ツール地図

ブランドの数を追うより、どの工程を担う製品かで選ぶべきです。以下は店舗開発との適合性を優先した代表例です。

Rayon
Browser 2D CAD / Collaboration
第一候補

初期平面、什器配置、注記、共同レビュー、DWG/DXF/PDF出力。CAD未経験者と設計者の間をつなぎやすい。

店舗平面共同編集DWG/DXF低い学習負荷
AutoCAD
DWG-native 2D / 3D CAD
条件付き追加

外注先とDWGを直接編集・返却する必要が増えた段階で追加。最初のPoCから全員へ導入せず、担当者1〜2名で始めます。

DWG直接編集要研修PoC後
SketchUp AI Render / Chaos Veras
Geometry-guided Visualization
有効

3Dモデルやビューを基準に、素材・照明・雰囲気をAIで展開。純粋な画像生成より形状を保ちやすく、デベロッパー向け説明に向く。

パース短時間比較架空要素QA
TestFit
Site Feasibility / Generative Design
郊外店向け

敷地、道路、駐車、建物プロトタイプを比較。複数の店舗型を一括で当て、最適候補を絞る用途に強い。

敷地比較駐車場プロトタイプ不動産判断
Snaptrude
AI-native Early BIM
検証候補

RFP・敷地からプログラム、隣接、2D/3D、BIM、プレゼン、Revit/Rhino出力までを一つのモデルで扱う。設計組織向け。

Brief→BIMRevit連携面積連動要PoC
Autodesk Forma + Revit 2027
Enterprise BIM Continuity
中長期

初期敷地・建物検討からBIMへ設計意図をつなぐ構成。Revit Assistantは自然言語支援、公式MCPは現状読取中心。量産・資産管理には強いが導入負荷も高い。

BIM設計連続性分析高い学習負荷
Polycam / Matterport
Reality Capture / Scan-to-CAD-BIM
改装店向け

既存店舗・テナントをスマートフォンやカメラで取得し、平面DXFやBIM化へつなぐ。元図が古い改装案件の入力精度を上げる。

現況DXFBIM現地再確認
ChatGPT + CAD API
Custom Automation
第二段階

自社の配置ルールをPython、AutoLISP、Dynamo、FreeCAD、Blender、CAD API等で自動化。差別化は最大だが、開発・保守・検証担当が必要。

独自ルール反復自動化保守必須QA必須
見送りやすい選択:住宅向けの「文章から間取り」アプリや、画像生成だけで店舗を描くサービスを中核にしないこと。アイデア出しには使えても、寸法・レイヤー・ブロック・ファイル受け渡し・法規確認の土台にはなりません。
06 / Recommended Stack

推奨ツール構成:まずは「軽量スタック」

CAD standard
B. DWG標準スタック
既存設計会社との互換重視
  • Aの構成にAutoCADを追加
  • 自社レイヤー、ブロック、寸法、印刷スタイルを標準化
  • AIにAutoLISP/スクリプトを作らせ反復作業を削減
  • 外注先へDWGで引き渡し、採用案から詳細化
  • 図面チェッカーを社内に1名置く
導入負荷中
最適用途月数件〜量産店舗
BIM scale
C. BIM一貫スタック
設計・数量・資産管理まで連携
  • Forma/Snaptrude:敷地・初期設計
  • Revit 2027:BIM・図書・設備連携
  • Autodesk Assistant/MCP:モデル検索・操作支援
  • 標準ファミリ、パラメータ、分類体系を整備
  • 設計事務所・設備業者も同じデータ基盤へ
導入負荷高
最適用途高頻度出店・全社BIM
本案件への提言:最初からRevit全社導入を目標にしないこと。目的が「デベロッパーへの初回イメージを間に合わせる」であれば、Aで速度を得て、3〜10案件の実績からBまたはCへ拡張するのが合理的です。

追加するなら、条件付きでTestFit

ロードサイド型、独立建物、駐車場付き、複数プロトタイプを敷地に当てる案件が多い場合は、Aの前段にTestFitを追加します。ショッピングセンター内のテナント区画中心なら優先度は下がります。

07 / Operating Workflow

目標業務フロー:候補地受領から初回提案まで

毎回ゼロから考えるのではなく、AIが参照できる「店舗設計キット」を先に作り、入力→3案→レビュー→資料化を定型化します。

STEP 0|常設資産
店舗設計キットを整備

店舗サイズ別の標準プラン、部門面積、什器寸法、通路基準、ブランド素材、サイン、過去承認案、デベロッパー提出テンプレート、NG例を一元化。

出力:標準データベース/テンプレート/プロンプト
STEP 1|受付
物件資料をAIで構造化

平面PDF・DWG・写真・貸方基準・柱・開口・天井・設備条件を読み、確定/仮定/質問の3区分で整理。未確認寸法は勝手に補完しない。

出力:1枚の物件条件シート
STEP 2|企画
面積と隣接を先に固定

売場、バックヤード、荷受、冷蔵冷凍、加工、レジ、事務、従業員、廃棄物等を面積表にし、隣接・分離・優先順位をルール化。

出力:面積表/隣接表/制約マトリクス
STEP 3|比較案
最低3案を同じ評価軸で作る

A:売場効率、B:顧客動線・体験、C:工事費・既存設備活用など、目的が異なる案を生成。AIに自己採点させるだけでなく社内担当が採点。

出力:A/B/C平面+比較表
STEP 4|CAD/3D
採用候補2案だけを精緻化

RayonまたはAutoCADで寸法・レイヤーを整えます。平面案を絞った後、提出に必要な案件だけ外部担当または選定済みの3Dツールで立体化します。

出力:PDF/DWG/DXF、必要時のみ3D
STEP 5|可視化
同じ視点・同じ条件でパース比較

入口、主通路、レジ前、重点部門の4視点を固定。AIレンダリング後に、架空の什器、窓、照明、サイン、避難口が増えていないか確認。

出力:比較パース4〜8枚
STEP 6|提案
デベロッパーが判断しやすい資料にする

「何を決めてほしいか」を冒頭に置き、物件条件、3案比較、推奨案、未確定事項、次の調査事項を1つのHTML/PDF/スライドにまとめる。

出力:初回提案パッケージ
STEP 7|ゲート
採用案のみ専門家へ

建築士、消防、設備、冷凍冷蔵、構造、施工会社へ渡し、法規・計算・納まりを確定。AI案と正式設計の差分を記録し、次案件の標準に戻す。

出力:専門レビュー済み設計条件

AIへの入力フォーマット例

案件ID:XXX 用途:食品スーパーマーケット/テナント 区画:幅__m × 奥行__m、床面積__㎡、天井高__m 固定条件:柱、PS、EPS、出入口、避難口、給排水、電源、搬入口 必要部門:青果/鮮魚/精肉/惣菜/日配/冷食/グロサリー/レジ/バックヤード 標準什器:品番、W×D×H、必要台数、配置禁止条件 優先順位:1. 売場面積 2. 顧客動線 3. 既存設備活用 4. 工事費 出力:A/B/C案、面積表、採用理由、未確定事項。寸法不明は推測せず「要確認」とする。
08 / Store-specific Considerations

スーパーマーケット・店舗ならではの難所

AI内製化と相性がよい領域

  • 部門別面積と売場構成の比較
  • 標準什器の配列・数量・通路パターン
  • 入口から主通路、重点部門への顧客動線
  • レジ台数・待ち列の初期レイアウト
  • ブランドカラー・サイン・素材のイメージ展開
  • 店舗サイズ別プロトタイプの再利用
  • デベロッパー提出資料の統一

専門家を外せない領域

  • 冷凍冷蔵設備、熱負荷、室外機、冷媒配管
  • 空調・換気・排煙・厨房フード
  • 電気容量、幹線、非常電源、照明計算
  • 給排水、グリストラップ、加工室衛生
  • 防火区画、避難、消防設備、内装制限
  • 構造荷重、床補強、開口・アンカー
  • バリアフリー、条例、確認申請、行政協議

成否を分ける「店舗設計キット」

資産最低限そろえる内容AIへの効果
店舗プロトタイプ小・中・大型、テナント/独立店、入口位置別の標準案ゼロから生成せず、適合・変形問題にできる
什器ライブラリ品番、寸法、クリアランス、電源・給排水、2D/3D部品見た目だけでなく寸法と設備条件を守れる
配置ルール通路、避難、レジ待ち、補充、搬入、隣接、禁止条件プロンプトを属人技から検査可能なルールへ変える
過去承認案採用理由、却下理由、施工後の課題、売上・運営評価「会社らしい正解」とNG例を学習コンテキストにできる
提出テンプレート表紙、配置図、平面、面積、パース、未確定事項、版管理毎回の編集を減らし、意思決定情報を揃える
QAチェックリスト単位、縮尺、寸法、レイヤー、入口、避難、柱、設備、虚構AIの自信満々な誤りを工程内で止める

必要な体制

店舗企画オーナー

商売・出店判断。優先順位と採用案を決める。

CAD/3D担当

寸法、レイヤー、ブロック、SKPの品質を担保。

AI運用担当

テンプレート、データ、プロンプト、版管理、検証を整備。

外部専門チーム

建築士、設備、冷凍冷蔵、消防、構造、施工の責任設計。

小規模開始なら、店舗企画オーナーとAI運用担当は兼務可能。ただし図面を読める人を最低1名は置きます。

09 / Risk, Security & Legal Boundary

リスクを制御しない内製化は、むしろ遅くなる

技術リスク

  • 単位・縮尺:mm/m/inch混在、PDF縮尺誤認
  • 幾何:壁の未接続、重複線、自己交差、浮いた部品
  • 内容:柱・避難口・設備位置の見落とし
  • 画像:存在しない窓、照明、什器、サインの生成
  • 互換:DWG/DXF/SKP/RVT変換時の属性欠落
  • 再現性:同じ指示でも別案になる生成AIの非決定性

運用リスク

  • 版管理:どれが最新・承認済みか分からない
  • 権限:MCPやエージェントが原本を書き換える
  • 機密:未公開物件、貸主図、設計ノウハウの投入
  • ライセンス:無料・個人向けプランの商用利用
  • 属人化:一人だけがプロンプトとファイル構造を理解
  • 責任曖昧:AI出力を誰が検証・承認したか不明

最低限のガバナンス

項目推奨ルール
契約プラン機密図面はChatGPT Business/Enterpriseと、非公開モデルに対応した会社承認のCADプランを使用。個人用・公開前提の領域へ未公開図面を入れない。47
データ分類公開/社内/機密/貸主秘密に区分。住所、物件名、契約条件、セキュリティ設備は必要最小限にする。
原本保護AIは原本に直接書き込ませず、コピーに対して実行。書込可能MCPは承認制、許可リスト制にする。
版番号案件ID_用途_案名_v03_YYYYMMDD_作成者などを固定し、承認状態をメタデータ化。
二重検証①AI自動チェック、②CAD担当の寸法・形状チェック、③専門家チェックの三層に分ける。
証跡入力条件、仮定、生成日、使用ツール、修正者、承認者を提案書末尾に残す。

日本での法的な境界

店舗の用途・規模・工事内容・自治体・既存建物の状態により、建築確認、用途変更、消防への届出、各種条例への適合が変わります。例えば、既存建物を特殊建築物用途へ変更する部分が200㎡を超える場合、原則として確認申請が必要と自治体が案内しており、申請不要でも法令適合は必要です。17

東京都では、店舗等の使用開始や、修繕・模様替え・間仕切り変更に関する消防届出を7日前までに求め、平面図・詳細図・立面図・断面図・仕上表等を必要書類として挙げています。AI案はこれらの正式図書の代替ではありません。16

必須ルール:「AIが法令を調べたので大丈夫」を承認理由にしない。案件ごとに建築士、所管行政、消防、設備・冷凍冷蔵の専門者へ確認し、最終図書と対外説明の責任者を明記します。
10 / Implementation Roadmap

導入ロードマップ:ツール導入より標準化を先に

0
基準作り

過去10案件、標準什器、提出物、NG例、外注工程を棚卸し

1
3案件PoC

同じ入力で従来外注とAI内製を並走し、速度・修正量・品質を比較

2
標準化

店舗設計キット、テンプレート、QA、版管理、役割を固定

3
自動化

CAD API、MCP、数量、過去案件検索、BIM連携を必要な順に追加

PoCで測るKPI

KPI測定方法推奨する暫定合格ライン
初回提案リードタイム資料受領からA/B/C案とパース提出まで1営業日以内を目標
比較案数同一条件で説明可能な案の数3案以上
外注概念設計工数従来案件との外注時間・金額比較概念段階で50%削減を目標
修正応答入口・部門・什器変更から再提案まで同日反映
図面品質寸法、単位、柱、開口、レイヤー、重複等の指摘数重大誤り0件、軽微指摘を案件ごとに減少
専門家差戻し法規・設備・施工での重大な手戻り件数提案段階の仮定が明示され、採用判断を覆す漏れ0件
資産再利用率標準部品・標準案・テンプレートの使用比率3案件目で70%以上

合格ラインは導入効果を判断するための提案値です。現行のリードタイム・外注費・出店件数を基準に調整してください。

初期PoCに必要な材料

  • 代表的な候補物件3件の元資料
  • 過去に承認された店舗図面10件程度
  • 外注先から戻った修正履歴・指摘
  • 標準什器の寸法表・CAD/3Dデータ
  • デベロッパー提出フォーマット
  • 出店判断の評価項目・優先順位
  • 法規・設備・消防の社内チェック項目
  • 現在の外注費・日数・担当工数の基準値
11 / Comparable Cases

CAD専任者がいない会社でも、狭い工程から内製化できる

店舗図面を完全に自社設計した公開事例は多くありません。そこで、設計人材が少ない企業、小規模チーム、日本企業、大手小売の到達像を分けて調べました。共通するのは「全部を内製しない」「標準部品を作る」「外部専門家との境界を残す」の3点です。

出典の読み方:事例数値の多くはソフト提供会社が公開した顧客事例です。第三者監査済みの性能値ではないため、ヴェルジェでは3案件を同条件で比較し、自社の数字を取ります。
Panel Plus
タイ/素材メーカーから家具OEMへ
最も近い

社内デザイナーが少なく、パネル製造が本業。設計知識と提案手段の不足を、共通3D部品と生産連携で補いました。公開事例では、400超の標準モデル、新人研修2日、受注から納品30日未満とされています。19

什器を毎回描かず、選んで置ける部品にする。
Kassa Kitchen and Bath
米国/2023年創業の小規模事業者
近い

3D提案、材料表、施工連携を同じ仕組みに集約。公開事例では、月70〜80件の提案、新人研修3〜5日、商品登録を3か月超から3日に短縮したとされています。20

3Dだけでなく、什器一覧・寸法・未確定事項まで一緒に出す。
CAGUUU
日本/家具・インテリア
国内例

3,000点超の商品を共通3D資産にして、MyCoordiの提案とVRショールームへ再利用。ベンダー事例では、レンダリング時間80%削減、新人研修2〜5日とされています。CAGUUU公式でも3D提案サービスを確認できます。2122

高頻度のケース・平台・レジから部品化する。
Upper Merion Township
米国/計画担当1人
少人数例

静的スケッチや外部コンサルを待つ前に、担当者自身が敷地案を比較。公開事例では、SketchUpで1日かかった検討を会議中15分で示せるようになったと説明しています。23

完成図ではなく、会議で次へ進む案を選ぶために使う。
Prince Property Group
米国/従業員1人の開発会社
初心者例

本人が「設計を知らない初心者」と明言する、今回もっとも近い例です。以前は初期検討を3〜4週間待っていましたが、自ら10分で敷地を確認し、12案を比較。方向が決まったモデルを建築家へ渡しています。27

待つ前工程を自分で行い、専門家へは要望を固めて渡す。
Trinity Commercial Group
米国/小売出店を支援する不動産会社
出店選定例

従来はサイトプランに30日、外部建築家へ頼んでも約1週間。公開事例では社内で同日中に検討し、65エーカーの案も3〜4時間。初期検討時間90%減、年9万ドル削減とされています。28

進めるか未定の候補物件は社内で絞り、採用案件だけ外注する。
Asda
英国/650店超のスーパー
到達像

Excel中心だった店舗情報を、AutoCAD図面とWeb台帳がつながる運用へ移行。支援と研修を受け、社内担当が什器・売場・部門・配置ルールを管理できる状態になりました。24

全員が描くより、最新版と標準を社内で管理する。
日本ピーマック
日本/専門解析の外注から内製へ
近接例

店舗CADではありませんが、専門性の高い気流解析を段階的に内製した例です。基本操作をガイドで覚え、簡単な解析は1日以内。公開事例では外注費をゼロにし、営業資料にも活用したとされています。25

簡単な提案から始め、高度作業は研修と外部支援で広げる。
Home Depot / DICK'S
米国/大型小売
将来像

既存の店舗プロトタイプを候補地へ当て、向き・駐車場・敷地条件を短時間で比較する用途でTestFitを採用したと発表されています。初心者例ではなく、標準店型を資産化した先の姿です。26

産直、カフェ併設など2〜3種類の標準店型を作る。

9事例をヴェルジェ用に翻訳すると

共通パターンヴェルジェでの実行外部へ残すこと
工程を狭くする条件整理、A/B/C案、初期平面、3D、5ページ提案実施設計、申請、施工
部品を標準化するケース、平台、レジ、カフェ、通路幅の共通部品案件固有の納まり・設備
短く訓練する川島さん・長利さん・吉田さんで過去案件1件を再現高度操作の研修・支援
並走比較する3案件で従来外注と同じ元図を使用プロ案の価値と差分の評価
引き渡しを固定する元図、条件表、採用案、3D、変更履歴、要確認一覧法規・設備・施工の確定
12 / Go or No-Go

最終判断:この案件は「Go」

ただし、目的を施工図の完全内製化ではなく、出店候補への初回提案と意思決定の高速化に限定して開始することが条件です。

すぐ始めてよい条件

  • 店舗の型・什器・部門構成に再現性がある
  • 初回提案で求められるのが平面・3D・イメージ中心
  • 採用案の後工程を確認する外部専門家がいる
  • 図面を読める社内担当者を最低1名置ける
  • 3案件で従来方法と比較検証できる

目的を見直す条件

  • AIだけで確認申請・施工図・設備図まで完結したい
  • 毎回まったく異なる業態で標準化できない
  • 元図・現況寸法の品質が低く現地確認もしない
  • 生成結果を検証する担当者を置けない
  • 無料・個人向けツールだけで商用運用したい
推奨する一文:
「店舗設計を全部自社で抱える」のではなく、“デベロッパーに選んでもらうための最初の3案”を自社で即時に作れる会社になる。正式設計は採用案に集中して外部専門家と仕上げる。

経営会議向けの推奨決裁

  1. 提案高速化スタックAによる3案件PoCを承認。
  2. 店舗設計キット作成を、ツール導入より先行。
  3. 外注先は削除せず、採用案の実施設計・法規・設備へ再配置。
  4. 3案件後、DWG標準化かBIM化かをKPIで再判断。
13 / Sources & Method

調査方法・主要出典

2026年8月31日時点の公式製品ページ、公式ドキュメント、行政情報、企業・ベンダー公開の顧客事例を中心に整理しました。効率改善の数値は公開元の説明であり、独立した性能保証ではありません。価格・提供範囲・プラン条件は導入時に再確認してください。

  1. Autodesk — AutoCAD公式情報
    Windows/macOS対応、DWGを中心とした2D・3D CAD、DWG形式の互換情報。
    https://www.autodesk.com/jp/products/autocad/overview
    AutoCADのネイティブ保存形式
  2. Trimble — SketchUp Free
    SketchUp Freeは商用利用不可。
    https://help.sketchup.com/en/admin/sketchup-free
  3. OpenAI — ChatGPT Capabilities Overview / ChatGPT Work
    画像・図・PDF・ファイル・データ分析、完成資料の作成。
    https://help.openai.com/en/articles/9260256-chatgpt-capabilities-overview
    https://openai.com/chatgpt-work/
  4. OpenAI — Business data privacy
    ChatGPT Business/Enterprise/APIの入力・出力を既定でモデル学習に使用しない旨、暗号化・保持制御。
    https://openai.com/business-data/
  5. Jw_cad — 公式情報
    Windows 10/11向けの2次元汎用CAD、フリーウェアの利用条件、DXF対応情報。
    https://www.jwcad.net/
    利用条件
  6. Vectorworks Architect — 公式情報
    建築・内装向けの2D/3D、ビジュアライゼーション、BIM機能。
    https://www.vectorworks.net/ja-JP/architect
  7. Rayon — Floor plan creation / Import & Export / Privacy
    小売・スーパーの平面、共同編集、DWG/DXF/PDF/PNG出力、非公開モデルの設定。
    https://www.rayon.design/use-cases/floor-plan-creation
    DWG/DXFの読み込み
    書き出し
    公開/非公開モデル
  8. Snaptrude — From brief to BIM
    RFP・敷地、プログラム、隣接、2D/3D、BIM、Revit/Rhino出力、AIレンダリング。
    https://www.snaptrude.com/
  9. TestFit 5.21 — Generative Design for Retail Prototypes
    小売プロトタイプの複数バリエーションを敷地上で自動比較。
    https://www.testfit.io/blog/testfit-5-21-generative-design-for-retail-prototypes
  10. Autodesk — Revit Public MCP Server
    Revit 2027向け公式Tech Preview。現行版はモデル照会・選択・表示・エクスポート等の読取中心。
    https://www.autodesk.com/blogs/aec/2026/06/17/revit-public-mcp-server/
  11. Autodesk — What’s New in Revit 2027
    Autodesk Assistant Tech Preview、自然言語での分析、ビュー・集計表、パラメータ、部屋管理、基本操作。
    https://www.autodesk.com/blogs/aec/2026/04/07/whats-new-in-revit-2027/
  12. Autodesk Forma
    初期敷地・建物設計、環境分析、Revitへの設計意図の受け渡し。
    https://www.autodesk.com/products/forma/overview
  13. Polycam — Floor Plan Digitizer
    現況平面の取得とレイヤー分けされたDWG/DXF出力。
    https://poly.cam/tools/floor-plan-digitizer
  14. Matterport — BIM
    現況スキャンからBIM成果物への変換サービス。
    https://matterport.com/bim
  15. Chaos — Veras
    3Dモデル・図面・スケッチを基準にしたAIビジュアライゼーション。
    https://www.chaos.com/veras
  16. 東京消防庁 — 新たにテナントを使用する皆様へ
    使用開始・工事等計画の7日前届出、必要図書。
    https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenants.html
  17. 取手市 — 用途変更(建築基準法第87条)の取扱い
    特殊建築物への用途変更が200㎡超の場合の確認申請、申請不要でも法適合が必要との案内。
    https://www.city.toride.ibaraki.jp/kenchiku/kurashi/sumai/sumai/youtohenkou.html
  18. e-Gov法令検索 — 建築士法/建築基準法
    設計・工事監理の資格制度、用途変更等の法的枠組み。
    https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202
    https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
  19. Coohom — Panel Plus customer story
    設計人材が少ない素材メーカーの家具OEM移行、標準モデル、新人研修、設計から生産までの連携。
    https://blog.coohom.com/from-panel-manufacturer-to-furniture-oem-how-panel-plus-launched-a-new-business-model-with-coohom/
  20. Coohom — Kassa Kitchen and Bath customer story
    小規模事業者の3D提案、材料表、施工連携、新人研修、提案件数。
    https://blog.coohom.com/how-kassa-kitchen-and-bath-converts-50-of-walk-ins-with-coohom/
  21. Coohom — CAGUUU導入事例
    3,000点超の3D資産、レンダリング、新人研修、MyCoordi。
    https://blog.coohom.com/caguuu-case-study/
  22. CAGUUU — MyCoordi公式情報
    寸法付き平面・3Dシミュレーション、法人向け店舗・ホテル等の空間提案。
    https://caguuu.com/blogs/news/mycoordi
    https://caguuu.com/products/mycoordi-for-business
  23. TestFit — Upper Merion Township customer story
    計画担当1人、外部コンサル前の比較、1日から15分への短縮例。
    https://www.testfit.io/customer-stories/upper-merion-township
  24. CADS — Asda retail floor planning case study
    Excel中心の運用から店舗台帳、社内管理者、標準什器・売場ルール管理への移行。
    https://cadsonline.com/case-studies/retail/cads-retail-optimising-asdas-floor-planning-process/
  25. 大塚商会 — 日本ピーマック導入事例
    専門解析の段階的内製化、操作ガイド、1日以内の基礎習得、外注費削減。
    https://www.otsuka-shokai.co.jp/products/case/pmac-dx.html
  26. TestFit — Home Depot / DICK'S Sporting Goods
    既存店舗プロトタイプの敷地比較と小売展開への利用。
    https://www.testfit.io/news/testfit-powers-the-future-of-retail-expansion-for-dicks-sporting-goods-and-the-home-depot
  27. TestFit — Prince Property Group customer story
    従業員1人、設計初心者、3〜4週間から10分への初期検討短縮、標準プロトタイプ、建築家への引き渡し。
    https://www.testfit.io/customer-stories/prince-property-group
  28. TestFit — 10 Customers That Shaped 10 Years of TestFit
    Trinity Commercial Groupの小売出店選定、同日検討、時間・費用削減。
    https://www.testfit.io/blog/10-customers-that-shaped-10-years-of-testfit